サムエル記下8章1~18節、コリント信徒への手紙第一7章25~40節
説教 平和の共同体の心得「パウロが幸福と思う暮らし」

 パウロが幸福だと言っている暮らしは独身で神に従って生きることです。これは神様の指示ではなく、あくまでパウロの意見であると言っていることですが、とても気になるところです。世の終わりが近いというパウロの思いがあってのことらしいですが、独身がよいということを語るとは少子高齢化の問題を抱えた日本では、国家破滅へ導くとして敬遠されことにもなるでしょう。
 
富国強兵の国家。私たち人間はそういう国家を求め、その国家で生きていくことで幸せにありつけると思っているのではないでしょうか。そこでは国家のためになる優秀な人材が重要となり、優性思想が蔓延るようになると思います。国家の存続のためには多くの人々が子々孫々続いて行くようにと人々は統制されていくのでしょう。国家のための国民とされていくのだと思います。人々は国家に縛られ、支配され生きることになるのでしょう。本日のサムエル記下8章には富国強兵国家の誕生が書かれています。ダビデの王国イスラエル。誕生までには内外の血生臭い戦争や事件がありました。明らかな十戒違反によってできた国家です。この経済的軍事的国家イスラエル王国は聖書ではイスラエルの民が要求してできた神と共に出来上がったとされる国家でした。しかし、聖書はこのような国家の行く末が衰え滅んでいくことをも示しています。
 
それに比べパウロの思想は国家に縛られません。国家だけではなく、他者にも配偶者にも縛られません。自由です。縛られ、支配されるのは神だけだという思想のようです。国家とか国家も含まれる世界は神が創るということをパウロは信じていたのだと思います。独身でもよい。世の労苦を考えるのなら独身の方がずっと幸福だ(コリント第一7:40)とまで語ります。パウロは禁欲主義者であったと田川建三が言っていますが、聖書全体を通してみて、神が性欲を満たすよう勧めたり、子作りを勧めたりするよりも、十戒とかイエスの言葉を守ることを勧めます。聖書編集者のすごい信仰を感じます。つまり、聖書編集者は「人間が人間の子作りや永劫続く人類のことを考え、実践していくことなど、しょせん無理。それよりも個人がより幸福である暮らしを求めていきなさい」とでも聖書全体を通して言いたいのかなあと思っています。既婚者の何気ない言葉「結婚しない方が自由」とか「結婚はめんどくさい」など聞くことも実際にあります。
 
まあ、独身の私がパウロの本日の言葉でうれしくなったということです。
断っておきますが、パウロ個人の意見ですから、別の弟子たちは結婚は良いと思っている人もいたでしょうし、イエス自身も結婚は神からの祝福であるとも語っていますから、結婚して幸せということももちろんあると思います。
 
皆様の祝福を祈ります。