聖書 創世記49章1節~33節(朗読49章1~2節)、マタイによる福音書13章24~30節
説教 平和の共同体の心得「現実を受け入れる希望」

特定秘密保護法案が可決されてしまいました。これは閣僚が秘密をもつことができる法律です。日本の国の安全保障に関わると判断されれば、情報を秘密にできる法律です。これはおそろしい。たとえば、安全保障に関わる日本の情報を得ようと相談しただけで懲役5年以下の犯罪になるかもしれません。自衛隊のヘリコプター墜落や軍艦の衝突事故の原因事故が隠蔽されることもあるでしょう。また、原発事故があっても安全保障上秘密にした方が良いと判断される場合もあるかもしれません。作業中の事故も隠蔽されるかもしれません。国家が研究を進めているあいips細胞を使った臨床実験や癌のワクチン開発に人体実験を行って人を謝って殺してしまっても隠蔽されてしまう可能性があるように思います。また、そういう情報を知った人が他人に話したり、マスコミに情報提供した場合、10年以下の懲役にさせられるようですね。秘密を作っては平和は実現しません。平和は情報公開による相互理解にしかないと思います。

本日の旧約聖書には、ヤコブの12人の子供に父親がこれから起こることを語る場面があがかれています。長男ルベンには父の妾と寝た罪を問われ、長子の誉れを失うと言われた。シメオンとレビは暴力を奮うので、呪われよと言われた。4男ユダは兄弟から称えられる、
5男ゼブルンは海辺に住む、6男イサカルは苦役の奴隷になる、7男ダンは自分の民を裁く、8男ガドは略奪者に襲われ。襲い返す、9男アシュルは食卓に恵まれる、10男ナフタリは美しい子供に恵まれる、11男ヨセフは最高の祝福を受ける、12男ベニヤミンは狼のように獲物を奪う、というようなことが言われています。いいことだけではありません、苦難の多い暮らしが待っていることも息子たちに語ります。その中にヤコブは「主よ、わたしはあなたの救いを待ち望む」と語るのです。本日の新約聖書は「毒麦のたとえばなし」です。天の国は次のようなものであると語り、続けます。「良い種を蒔き、麦の穂が出てきたが、そこに毒麦も一緒に生えてきた。しもべが主人に毒麦を抜こうかと聞かれるが、主人は『毒麦を抜くとき麦も抜くかもしれないので、借り入れの時まで一緒に育つままにしてけ。刈り取る者に処分は頼む』」というようなことを話されました。

旧約聖書にも新約聖書にも人間として平和的で倫理的な人も、争い、非道な人も含めて示され、彼らが救われるようにという祈りが捧げられ、天の国においても善人も悪人も一緒に育てられることが示されています。現実で起こるいいことと思われることも悪いことと思われることもすべてを受け入れ、主に救いの道を委ねることの重要性がここに示されていると思います。ですから、ある意味、正直なんですね、聖書は。人間の悪いところを赤裸々に出してくれているのです。
悪いことを赤裸々に出せるには、赦しとか、悪いこと、罪への裁きは神がやる、という確信が必要だと思います。とかく人間は自分で、この人はいい、この人はダメ、とかレッテルを貼っている自分がいるのではないでしょうか? それは、自分が神となっている高慢な態度でありますが、悪に報いる神を信じていないからそういうことになってしまう。更に、復讐さえもしてしまう結果になるのだと思います。そういう状況では罪は告白されないと思います。そこには、秘密、罪の隠蔽が生じてしまいます。特定秘密保護法も基本的に人間不信が基にあってできる法案だと思います。そういう不信仰な私たちに神様は、イエス様は言っているように思います。「裁いたり、差別したりしているあなたは何者?神様が後で人間の善し悪しを決める。だから、あなたはあなたのやることをしていないさい」とでも言われているようです。こういう神を信じていないと、罪の告白はできず、隠蔽、秘密、隠し事が増えてしまうのでしょう。

今回の特定秘密保護法案の可決で、力にはかなわないと思いました。9月頃からパブリックコメントを集めていましたので、反対を表明していました。日本という国は私の税金を支出して運営している私の組織だと思ってですね、自分の意見を反映してもらうようにしたいと思ったわけです。平和の国づくり、情報公開、相互理解へと進むべきと私は自分の国を変えようと、変わってほしいと思っていました。しかし、一部の力ある為政者には敵わないです。日本の国は人の国です。天国とは違いますね。日本の国を神の国としようとするのは間違っていますね、きっと。色々な人がいる世界です。いい人も悪い人も同居する世界ですね。ここに本は天国でも神の国でもなかった。人が作った国だから、平和国家は無理かな?なんて思いました。

しかし、聖書には、神の国は、あなた方の間にある、とも語っています。私たちの間にもう既にある、天国。ここに私たちは生きているのではないのでしょうか。この神の国の国民として生きていけるのではないのでしょうか?実にここは平和でお互い相互理解がなされている世界。神様はそれを用意してくださいました。キリスト者はこの神の国の住人です。お互い愛し合う関係の世界なのではないでしょうか?
こういう世界は確かにあると思います。すべてが癒されたように思える瞬間やそういう時って経験できることがあると思います。至福の時です。それに気づいているのがキリスト者なのかもしれません。ここは天国か、と思うことが、現実世界にもあると思います。ずーっとそうしていたい、と思う。日本国憲法9条戦争の放棄をうたった条文。これは敗戦によってできた条文と言いますが、先進国では戦争放棄をうたった奇跡的条文です。これはこの世にできた神の業ではないかな、と思っているわけです。特定秘密法案を作った安倍さんや石破さんや菅さんたちは必死にここを改正したいと思っているようですが。。。

ですから、憲法9条のように地上に現れた天国は、地上の現実の悪も善も混じり合った、毒麦も良い麦も同居指定している現実生活で生き抜く、糧やエネルギーとしてあるように思います。地上を天国のようにするために、それぞれ分に応じ、祈り、活動すべきなのだと思っています。天になるごとく、地にもなさせたまえ、と主の祈りでいのるではないですか。そして、神であるイエスが地上に来られ、世の誤りを語り、罪を悔い改めるように語った。十字架にかけられても、われわれは罪人である、悔い改めよ、罪は赦される、と語った。ではありませんか。間違いは、間違い、悔い改めるべきは、悔い改めるべきなのだと思います。

「人間として、何もせず、何も言わず、不正に立ち向かわず、抑圧に抗議せず、また、自分たちにとってのよい社会、よい生活を追い求めずにいることは、不可能なのです。」

このことばは、アパルトヘイトという人種差別・人種隔離政策撤廃を平和的に実現した、南アフリカ共和国元大統領 ネルソン・ロリハラハラ・マンデラさんのことばです。

2013年12月6日奇しくも特定秘密保護法案が成立した日、マンデラ大統領がなくなりました。平和を奪うかのような法に対し、私は早いうちから、抗議していく必要があると、本日の聖書から、マンデラ氏の生き方から学ぶものです。


<ネルソン・ロリハラハラ・マンデラ(1918~) 南アフリカ共和国元大統領・政治家・弁護士。アパルトヘイト(人種差別・人種隔離政策)に反対し、人種差別撤廃、民族協調を訴えた。1990年、27年にわたる投獄(国家反逆罪で終身刑)から釈放。1993年、デクラークと共にノーベル平和賞受賞。1994年、南アフリカ初の全人種参加選挙により、南アフリカ初の黒人大統領に選出。1999年の総選挙を機に政界から引退。>


*2010年2月11日は、ネルソン・マンデラ氏が、27年間の投獄を経て釈放されてから、ちょうど20年にあたる日(1990年2月11日釈放)。南アフリカでは、当日、マンデラ氏釈放20年を記念して国会が開かれ、マンデラ元大統領を議会に招いて祝賀会が執り行われた。